家でボーッとしていていた時のこと。副店長がなにやら奇声をあげているので何だなんだと近づいてみると、一冊の本を抱えて、乱丁本発見!と興奮している。よく見るとその本は佐藤春夫の『殉情詩集』の復刻版で、アンカットの本なのであった。
アンカット本というのは、本の小口(紙の端っこ)が切れていない、つまり裁断されていない本のこと。普通小口の三方が裁断されていないか、天の小口だけかまたは下の小口が裁断されていないかというところだが、ま、とにかくどこかが裁断されていないので、ページを括っても読めなくなっているわけである。
読もうとするならくっついているところをペーパーナイフかカッターで切り離しながら読むしかない。面倒くさいことこのうえない本だが、慈しむようにページを切り離しながら読むという行為もそれはそれで捨てがたい喜びがあったりするのかもしれない。
そんな本だったので副店長は乱丁本だと早合点したわけだが、お店にはもう一冊、アンカットの本があるのだった。筑波孔一郎の『殺人は死の正装』というミステリー本で、幻影城から出ていたノベルス。角川文庫に入っているが、幻影城ノベルス自体は絶版なのでめずらしいといえばめずらしい本なのである。この本の下の小口がアンカットになっているので、切り離しながらミステリーを楽しむという趣向になっている。
ただ実際に切ってしまったらなんか本の価値が下がる気がしたのか、たぶん前の持ち主は切らずにくっいているページを指でひろげて読んでたんだろうなと。週刊誌の袋とじみたいな気分かも(笑)。
ま、そんな本もあります。乱丁本の場合もあるけどね(笑)。
今日の国分寺は晴れ。
今日流れているのはエディット・ピアフです。