中村文則の「掏摸」を読んでみた。
どんな内容なのか、またどんな作家なのか、まったく情報なしで読む。しばらく前に、話題になっていたことくらいしか知らずに読んだ。ページをくくるごとに引き込まれた。好きなタイプかも、という予想がよぎる。
これはミステリーなのか?いや、純文?そんなことを思いながら読む。あー、それにしても引き込まれる。ノワールもののミステリ感に引き込まれているのか、音のない情景描写(心の中で見ている情景)に引き込まれているのか。どちらにせよこれは久しぶりの「当り」、なのであった。
ひと段落の終わりのセンテンスが上手すぎる。余韻がそのまま頭に残る。上手いわ、この人。って、当たり前か、プロだもんな。いいなあ、こんな小説書けて。そりゃあもっとこういう風に展開してほしいとか、もっと饒舌に語ってほしいとかあったけど(ノワールものだから仕方ないけど、物語の筋自体がどこかきざっぽい展開で映画でも観てるような物語上の設定感が少し気になった)。
合間あいまに挿入される、目の前に立つ塔、が効いている。こういう文章の組み立てがプロ所以なのだろうが、最近そんな感じの文章読んでなかったから新鮮だった。最近読んでいるのがエンタメ寄り過ぎていたからそう感じるのかわからないけれど。
ミステリ(ノワール)味の純文学小説、という感じ。ラストの描写も余韻を残す展開で、続編アリ?っていう気もしたが、やはりあるらしい(笑)。中村文則、今ごろになって読んでるなんて、遅れてる!という感もあるが、いい作家に出会いましたな。芥川賞、獲ってたんだ?いまその「土の中の子供」読み始めました。おすすめです(だから遅れてる、って。人気作家だっつうの)。
今日の国分寺は秋晴れ。いい気持ちですが、鼻水が止まりません。
今日流れているのは押尾コータロー。いつもと違うアルバムです。