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「夜の庭」市川曜子

 市川曜子。画家。版画家。

 画家であり、版画家でもある作家が紡ぐ言葉は、ヴィジュアルとどう関わっているのか?それとも、関係ない?

 「夜の庭」と題された、十数行の言葉と二つの銅版画による挿絵。しっとりとして重厚感のある版画紙の上に刷られた言葉と絵。屏風状にジグザグに立てられた体裁で、裏には黒革のブックカバーが添えられている。一見すれば、モノクロームの彫刻のよう。まずは何より、存在感を示す。その辺がヴィジュアルアーティストの性なのか?

 闇が降りて 水の流れる音が聞こえる
 見えない花
 けれどそこにある

 夜の庭の情景なんだろうと想像するが、展示のあとで、追加で持参されたアクリル画を見て一目瞭然。それは同じく「夜の庭」と題された絵画であったが、その画面の情景は詩の前半で表された言葉そのままであった。

 言葉ではない絵画で表された「夜の庭」と、詩の形を持った言葉で表された「夜の庭」。どちらも同じテーマなのだから同じイメージには違いない。けれども絵画と詩では形式も違うわけだから、違うイメージを感じてもおかしくないはずなのに、こうまで同じイメージを持てるのは、作家本人のイメージ自体にまったくぶれがないからだろう。

 「夜の庭」というタイトルから感じるのは、少女が夢想する、どこか非現実な「情景」。少女が夢想するというのは余計かもしれないが、どこかそういった透明感のある感性を大事にしていそうで(作家自身が少女であるという意味ではなく、大人になっても少女の感覚を有している、という意味)、絵画にせよ版画にせよ詩にせよ、何かイメージしたものをそういった透明感のある感性で表現している作家なのである。ぜひ、お店でその感性に触れてみてください。

 ちなみに彼女も本好きでいろんな本を読んでいる。また、仕事で絵本の絵(または挿絵)をたくさん描いていらっしゃる。展示の脇に、絵本作品「焼かれた魚」小熊秀雄・文 市川曜子・画パロル舎も参考作品として置いてあります。こちらも→窯猫通信覚書~銅版画日記

 今日の国分寺は晴れ。今日、明日と国分寺のイベント「ギャラリーうぉーく」開催中。うちのお店も参加しています。入口ドアでフラッグが風に翻っております。今日は架空の本屋「こいぬ書房」さんが家族でご来店!いつもありがとうございます。

 今日流れているのはアメリカの(ポップ系)現代音楽のポコポコミュージックです。
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by yoshizo1961 | 2014-05-17 16:09 | 展覧会情報 | Comments(2)
Commented by こいぬ書房 小泉 at 2014-05-18 21:03 x
家族全員でまどそら堂さんにお邪魔したのは初めてでした!子供もまどそら堂さんでだいぶリラックスして本を選んでくれるようになったみたいです。ご主人のおかげです。

「店舗」という「場」を持つ事について、まどそら堂さんとお話できて、本当に「場」というのはかけがえないものだなあとしみじみ思いました。大好きな喫茶店や本屋や映画館が次々に無くなっていく今、リスクを負ってでも新しく「場」を作ろうというまどそら堂さんがいつまで国分寺に在る未来を願っております。
Commented by yoshizo1961 at 2014-05-19 13:42
こいぬ書房 小泉さま
 コメントありがとうございます。つい涙が出そうに・・・。ほんと、ありがとう。近い未来くらいまでは、なんとかつないでいこうと思っております。また3人でいらしてください。お子さんにもパパにもよろしく!
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