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西村賢太でやさぐれる

 ついに、というか、とうとう触れてしまう時がきた・・・と言いたくなるほど重たい私小説の西村賢太。いやいや、確かに重いものはあるけれども、そんなに騒ぎ立てるほどでもないだろうと皆さん思うだろうが、何故か西村賢太を読むたびに一悶着あるので、あまり触れないようにしていたのだ。

 西村賢太の作品の中でも特に”秋恵もの”と言われる、唯一相思相愛になった女性との同棲生活の話を読むと、必ず後で妻と大喧嘩になるというジンクスがあるので、最近は西村賢太の本に近づかないようにしていた。

 けれども一度覚えた”西村賢太私小説”の味は忘れがたく、たまにそぉーっと引っ張り出して読んでしまう。するとてきめんに心がやさぐれて、妻にぞんざいなくちのきき方をしては大喧嘩へと流れていくのである。影響されやすいだけかも知れないが、それほどに人の心に爪を立てる私小説というのも、あまり例がないように思われる。川崎長太郎の私小説のようなどこか抜けてるような感じとも違い、上林暁の私小説のような知性を感じさせる、というより痴性に長けた私小説、というところか。

 特に好きな作品は、「小銭をかぞえる」。お金がからむと色々複雑だけれど、この人のねちねち加減が絶品で、しかも大正、昭和の言い回しでそれをやられると佳作な私小説に思えてくるから不思議。既読の方なら、その嫌さ加減が快感になってくるのを判ってもらえるかも知れない。西村賢太をまだ読んでいないという方は、ぜひどうぞ。やさぐれて誰かと喧嘩になっても、私のせいではありませんからあしからず・・・。

 今日の国分寺は晴れ。日差しがまぶしくなりつつあります。が、花粉が・・・。

 今日流れているのはぽこぽこミュージック。クリンペライです。
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by yoshizo1961 | 2014-03-22 15:05 | 本あれこれ | Comments(0)
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