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謎の戯曲原稿

 昨年の話だが、買取をした本の中に洋物の雑誌が一冊紛れ込んでいた。1933年発行の演劇雑誌、「THEATRE ARTS MONTHLY」9月号。黄色の表紙は茶ばんではいるが、80年前の雑誌にしては状態は悪くない。本文ページもシミ、ヤケはままあるが読むには差し支えない(英文ですが・・・)。買取後、整理中に気がついたのだが、その雑誌の中に、これまた茶ばんだ原稿用紙が3枚挟み込まれていた。

 こういうことはよくある。持ち主が何げに挟み込んだ記憶のかけら・・・とでもいおうか。四葉のクローバーのようにおしゃれなものから、古い定期券などの日常を伺わせるもの、読んでつらくなるようなラブレターが入っていたこともある。

 以前、買取した本の中に(これも原稿用紙であったが)挟み込まれていたときは、買取させていただいたお客様の家族の方の原稿と思われたので、連絡してお返ししたこともある。しかし今回の原稿は、確認をとってみたら、買取させていただいたお客様由来のものではなく(そのお客様もせどりで見つけられたものらしかった)、原稿の存在も知らなかったようだ。

 古くて茶ばんだ原稿用紙。にわかに興味が湧いてきて、調べてみることにした。演劇雑誌といっても80年も前の洋物の古い雑誌だし、その原稿の内容も「戯曲」であると思えるので、ひょっとしたら、ひょっとするかも・・・。

 そう思ってはみたものの、手掛かりになるものがあまり無い。タイトルはあるが、署名も日付もない。完結したものではなく、最初の3枚だけでその後がない。あえて捜せば原稿用紙のメーカー名の表記と、文字が旧字で書かれていることくらい。このあたりでおおまかな年代は特定できそうだ。内容はというと、違うかもしれないがプロレタリア演劇系のような印象を受けるので、その特徴的な年代とも符合させれば何かわかるかも知れない。

 おおよその年代、プロレタリア系の演劇というと頭に浮かぶのは、たとえば村山知義。あの「しんせつなともだち」の画家だ(2013.10.18ブログしんせつなともだち参照)。画家だが、小説家でもあり、プロレタリア演劇を日本で広めた人でもある。村山は1922年頃ドイツに遊学しているし、帰国してからドイツで影響を受けたと思われるプロレタリア演劇に力をいれているし、この雑誌はベルリンでも発行されていたらしいし。1933年も近しいではないか!

 これは直感でしかないが、ひょっとして村山知義の自筆原稿ではないか?・・・一度そうひらめいてしまうとその思いが募ってくる。99パーセント違うと思うが、直感は信じてみたい。ならば、演劇関係の資料があるところで村山知義の筆跡を照合してみればいいわけだ。もしかしたら、ぴったりだったりして!もしビンゴだったら「村山知義の自筆原稿、国分寺の古書店で発見!」という見出しが、新聞紙上に躍るかもしれない・・・。

 たとえ名も無い作家のものだったとしても、はたまた作家でもない、演劇を志す一学生が記したものだったとしても、こうして何十年もさまよってまどそら堂にたどり着いたわけで、それも何かの縁かもしれない。もう少し時間をかけて調べてみるつもりだが、売るときは元の雑誌に挟み込んだまま売ろうと思っている。この謎の原稿が世に出ることはあるか?・・・これだから古本屋はやめられない。

 今日の国分寺は晴れ。暖かい?先日、モーストちいさなお客様がご来店。今日も別のご夫妻&モーストちいさなお客様がご来店。皆さん6ヶ月くらいだという。うちのお店が開店した時期と同じ。つまり、タメ?ああ、こんな風に人は生きていく!とわけのわからない感慨を覚える今日この頃。フェイスブックページでも触れていますのでそちらもよろしく!明日は定休日ですのでお休みします。また金曜日に。

 今日流れている音楽は、めずらしくクラシック。JASCHA HEIFETZによるブラームスのバイオリンコンチェルト。古い音源で、時代がかって良い感じです。
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by yoshizo1961 | 2014-01-22 16:09 | 本あれこれ | Comments(0)
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