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空にいちばん近い悲しみ

 安井かずみの「空にいちばん近い悲しみ」を、知っていますか?

 1970年に新書館から出版され、安井かずみの詩とエッセイで構成された本。ヒッピー風のファッションとメイク、アンニュイな視線で座っている本人と宇野亜喜良のイラストが印象的な表紙は、まさに70年代。

 昨日の「タイトル考」の秀逸なタイトルにも加えたくなる題名。作詞家ゆえの言葉だからだろうか、空にいちばん近い悲しみなんて、美しすぎる。

 表紙を開くと、淡いブルーとスミで印刷された扉(安井かずみがマイクの前で朗読をする場面)があり、書名、コンテンツと続き、その後にタイトルを含む詩が4編並ぶ。詩は、優しげで上品な女性ことばで綴られており、それでいて甘ったるくない。詩の後にエッセイと続くが、随所に詩の挿入がある。

 めずらしいのは、3章目のエッセイがいきなり横組みになるところ。その後の章からまた縦組みに戻る。その構成が不思議。これもまた、70年代の所以であろうか。次の章で詩が綴られ、その後、創作の物語があり、最終章も詩。ざら紙風のモノクロで、本人の立ち姿のページにはプロフィールがあり、奥付となる。裏表紙には、彼女のニックネームであるZUZUの文字が真ん中に大きく入っている。また、各章ごとに宇野亜喜良のイラストが彩りを添えている。  

 作詞家として名を馳せた彼女の生活や生き方は当時から伝説であり、特に女性には影響を与えた人だったらしい。1994年に肺がんで逝去されたが、当時、夫の加藤和彦の献身的な支えが話題になったことを憶えている。NHKの番組で見た方も多いだろう。

 彼女が最後に遺した言葉は「金色のダンスシューズが散らばって、私は人形のよう」だったそうである。お店にある彼女の本は経年劣化で多少ヤケているが、詩もエッセイも若々しく70年代そのままだ。

 今日の国分寺は晴れ。少し涼しい。明日も晴れて欲しいね。今日、美術家のKさん夫妻が来店してくれた。ありがとうございます。
 
 本日のBGMは古謝美佐子。何故おきなわ
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か?たまに聴きたくなるものです。いつもと違う雰囲気になりました。蛇足ですが、浅田美代子の「赤い風船」も安井かずみの作詞だった!(好きな曲です)



 
by yoshizo1961 | 2013-10-13 18:10 | 詩あれこれ | Comments(0)
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