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遠い日の「天国への階段」

 ミュージックあれこれ・プログレ編に続いてハード・ロック編を。まずはレッド・ツェッペリン。

 レッド・ツェッペリンといえばやっぱり「天国への階段」かな。みんな知っている曲といえば。若者で、まだ聴いたことないという人は速攻でユーチューブへ。好きな曲ベスト10をやれば、上位には必ず入れたい曲ですな。

 イントロのギターの音色がシンプルでいいねぇ。途中でかぶるリコーダーの音色も。あれはほんとにリコーダー吹いてるんだよね?ライヴではシンセサイザーみたいだけど。あのリコーダーパート、ヤマハのあの伝説のスぺリオか?

 天国への階段っていうタイトルも秀逸だった。印象に残るし。歌詞も印象深いんだろうなぁ。でも、And she's buying a stairway heavenを、「彼女は天国への階段を買っている」って訳どう?そのまんま・・・。

 There's a feeling I get when I look to the west
And my thoughts I have seen rings of smoke
through the trees and
the voices of those who stand looking
 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 上記の歌詞とメロディがいい感じ。好きなパート。盛り上がる前の、さあ、これからっていうところかな(意味がよくわからないか)。この曲はじりじりとして、ぐぐっと伸びて、最後に弾けるから、その流れを聴きながらなぞっているので、このパート辺りがちょうど盛り上がりの予感でいい感じなのである。

 この曲は「レッド・ツェッペリンⅣ」に入っているが、このアルバムはタイトルもグループ名も何もないのでなんじゃこりゃって感じだったけど、このジャケのイメージ=ツェッペリンであった。あー、ツッペリンをしみじみ聴く年齢になっちまったか・・・。遠い日の「天国への階段」。胸にしみるわ。

今日の国分寺は終日、雨。雨もたまにはいい感じだけど。それと、今夜は久し振りに「虎の穴」があります。興味のある方はどうぞ。もうひとつ、明日は木曜なのでお休みします。金曜日は営業、土、日、月と臨時3連休です。よろしく!

 今日流れているのはツェッペリンのリマスターベスト盤、です。
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by yoshizo1961 | 2014-04-30 16:13 | ミュージックあれこれ | Comments(0)

アダルト?

 ビデオある?と聞かれて、一瞬、ん?と考える。ビデオ?

 DVD?どちらにしてもお店には置いていないので、その旨を申し上げる。ふーん、という感じでお帰りになるが、まあ、こんなちいさな店なので置こうにもそのスペースがない。広かったとしても置かないかな。音楽CDは置くかも。・・・と考えてはみたものの、そんなニュアンスでもなかったなと思えるさっきのお客様。

 そうか!そういう意味か、と納得する。うちのお店にはアダルト系の本やビデオ・DVDは無いのである。そういえば他にもそう思える事例があったなぁと一人で納得。

 実際、昔ながらの町の古本屋は何で生き残ってきたかというと、このアダルト本のおかげであるという話を聞いたことがある。確かに古本屋巡りをしていると、だれもいないと思って入ってみると、奥まったそのコーナーには何人かはいた、ということも。実際、利益が上がるんだろう。

 うちのお店は当初からアダルト系は置いていない。だってこんな小さいスペースで、子どもらも来るのにさすがに置けないよ。・・・と思いながら棚を見渡す。そしたら怪しい文庫が一冊!といっても若いころの樋口可南子の写真集(犬のお父さんの奥さんです)。それから昭和のカストリ雑誌が一冊(京極夏彦の小説に出てくる関口君が書いている媒体です)。まあこれは資料性があるからいいと。全然エロくないし。

 そんなものかなと棚を眺めると、おお!これは・・・。

 永井豪の「けっこう仮面」!うちのお店でいちばんアダルトに近いのがこれだもん、ははははは。
しかし「ハレンチ学園」を実写で見たことがある世代だといっても、この「けっこう仮面」を説明するのも何なんで内容は割愛。まあ、いま考えるエロとは程遠い・・・。

 そんなわけでアダルト系はありません!よろしく!

 今日の国分寺は曇り、時々小雨。また明るくなってきた?それからお知らせ、5月の連休、3,4,5の3日間お休みさせていただきます。6日は営業します。

 今日流れているのは原田真二とボブディラン。へんな取り合わせ?
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by yoshizo1961 | 2014-04-29 15:27 | マンガあれこれ | Comments(0)

こんにちはの女の子

 ちいさなお客様。元気よくごあいさつ。

 先日、といっても1週間くらい経ってしまったけれど、ちいさなお客様ご来店。目をくりくりさせて、おおきな声で「こんにちは」のごあいさつ。店主にしてくれた後、お店の前でバス待ちしていた年配のご夫婦にも(ご夫婦ともにキョトンとしていたけど)。ちゃんとごあいさつできたね。

(自分のはなしだけど)幼稚園に入ったとき、なぜか途中から編入したので、同じ年頃の子どもたちが集団生活しているのが理解できず、入園して間もなく何かの行事の際に、みんなが出ていった後の教室に一人で残って、長い机の下に潜りこんでじっとしていた記憶がある。途中先生が探しに来てもじっと声をたてずに隠れていた。そのうち大騒ぎになり(ひとり行方不明なので)先生たちがみんなして自分を探し回っているのがわかったけれど、それでも石のようにじっとしていた。何でそんなことをしているのか自分でも不思議だなと思いながら。小学校に上がってからも、最初はひとりで帰って来れたねと褒められたりしてうれしかったけれど、ドボルザークの「新世界」が流れる下校時間、校門あたりで校舎を振り返りながら、ここにあと6年間も通い続けるのかと思ったら、6年間という長さは永遠の長さに感じて、どっと疲れたような気になった。

 子どもなのに常に厭世的な思いにとらわれていた。なぜかわからないけれど。それで対処できないと泣く。そんな子どもだったから、はきはきとごあいさつができて、剣のない笑顔の子どもたちがうらやましい。子どものころの自分だったらまず無理。もじもじして隠れてるだけ。性格がねじ曲がっていたのかな(今も・・・っていま誰か突っ込んだ?)。

 大人になって、精一杯の声であいさつするようにしてるけど、子どもらには負けてる(笑)。小さいころからもっとおおきな声を出すようにすればよかった。そういえば、一昨日、さわちゃん(ヘルメットの女の子)もお店に寄ってくれた。そのお話はまたのちほど。ちいさなお客様の子どもたち、いつもありがとね。

 今日の国分寺は晴れ。いい陽気。下駄を履きたくなった。

 今日流れているのは、カンサス、デビッドボウィ、トッド・ラングレンなどなど。のどかに。
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by yoshizo1961 | 2014-04-28 15:12 | ちいさなお客様 | Comments(0)

新入荷情報16

 本日は新入荷情報です。品出しは本日からです。


[SF・ミステリ]
「メトセラの子ら」ロバート・A・ハインライン・/ハヤカワ文庫/昭和60年・11刷
「未知の地平線」ロバート・A・ハインライン・/ハヤカワ文庫/昭和61年・初版
「宇宙の戦士」ロバート・A・ハインライン・/ハヤカワ文庫(予約取り置き)
「人間以上」シオドア・スタージョン/ハヤカワ文庫/1994年・21刷
「スタータイド・ライジング上・下」デヴィッド・ブリン/ハヤカワ文庫/1990年・8刷
「砂漠の惑星」スタニスワフ・レム/ハヤカワ文庫/昭和58年・7刷 ※裏表紙に書き込みがあるため、この本に限り100円均一棚に入れます。早い者勝ち!
「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」中村 融編/ハヤカワ文庫/2010年・初版
「妖精作戦」笹本祐一/創元SF文庫/2011年・3版
「新世界より上・下」貴志祐介/講談社/2008年・1刷 ※単行本
「冷たい密室と博士たち」森博嗣/講談社文庫/2011年・40刷
「ミス・マーブルと13の謎」アガサ・クリスチィ/創元推理文庫/1976年・36版

[コミックス]
「まんが道 2」藤子不二雄/少年画報社/ヒットコミックス/昭和55年・重版

[児童書・絵本]
「赤毛のアン」モンゴメリー/朝日ソノラマ/昭和51年・初版
「鏡の国のアリス」ルイス・キャロル/福音館書店/1986年・19刷 函
「子ねずみラルフのぼうけん」ベバリー・クリアリー/童話館出版/2000年・4刷
「せむしのこうま」うやまつぐお/ポプラ社/昭和43年
「学研まんがひみつシリーズ カブトムシ・クワガタのひみつ」学研/昭和52年・9刷
「しょうぼうねこ」エスター・アベリル/文化出版局/1995年・17刷
「ぴよちゃんとひまわり」いりやまさとし/学研/2006年・8刷
「おばあちゃんがこどもだったころ」マーシャ・ウイリアムズ/パルコ出版/1991年
「うまかたやまんば」おざわとしお再話 赤羽末吉画/福音館書店/1996年・10刷
「春のわかれ」槙佐知子文 赤羽末吉画/偕成社/1990年・9刷
「ちいさいおうち」ばーじにあ・りー・ばーとん/岩波書店/1987年・24刷 大型絵本
「The 500 HATS」Dr.Seuss/RANDOM HOUSE(洋書)


[料理]
「料理歳時記」辰巳浜子/中公文庫/1996年・14版
「魯山人味道」北大路魯山人/中公文庫/1992年・17版
「極上のおやつ」松任谷由実 本上まなみ 深澤里奈 藤田千恵子/マガジンハウス/
2007年・1刷
「ノンノ お菓子パーフェクトノート」城戸崎愛/集英社/1996年・1刷
「蒸すっておいしい」吉田勝彦/文化出版局/2001年・2刷
「材料を100%活かす料理」森下加代子/婦人之友社/1976年
「食卓の器」光芸出版編/光芸出版/平成6年・初版

[文芸]
「インドラの網」宮沢賢治/角川文庫クラッシックス/平成8年・再版
「月と六ペンス」モーム/新潮文庫/平成24年・89刷
「劇場」モーム/新潮文庫/昭和48年・15刷
「太平洋」モーム/新潮文庫/平成7年・44刷
「おそるベキ子供たち」コクトー/角川文庫/昭和49年・9版
「鹽壷の匙」車谷長吉/新潮文庫/平成7年・初版
「ノンフィクション全集(ペイン キャパ ゲバラ)」筑摩書房/1972年・初版
「プレリュード前奏曲」有為エィンジェル/講談社/1983年・1刷
「鳩よ!」特集内田百閒/マガジンハウス/1993年5月号

[その他]
「鬼太郎の地獄めぐり」水木しげる/角川文庫
「少女コレクション序説」澁澤龍彦/中公文庫/昭和60年・初版
「遠い日の夢」葉祥明/サンリオ/1980年・5刷
「車掌」穂村弘 寺田克也/ヒヨコ舎/2003年・初版
「たまゆら」永田萌画集/サンリオ/1982年
「SPAM」Marguerite Patten/hamiyn
「大高輝美のコロコロ人形」雄鶏社/昭和54年・19版
「赤ちゃんのあみもの」雄鶏社/昭和50年・2版
「フラッポーテープ手芸」日本ヴォーグ社/昭和46年
「赤羽末吉遺作展」図録/いわさきちひろ絵本美術館
「チルチンびと」創刊2号/風土社/1997年
「イギリスのかわいい本」くりくり編集室/二見書房/2006年・初版
「インド」辛島昇監修/新潮社/1992年
「インドの時代」中島岳志/新潮社/2006年
「要説 教育社会学」加藤正泰/酒井書店/1979年・再版 函

 
 今日の国分寺は晴れ。言うことなしのいい天気です。

 今日ながれているのは、キング・クリムゾン。3時過ぎにはかわります。
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by yoshizo1961 | 2014-04-27 14:25 | 入荷情報 | Comments(0)

21st CENTURY SCHIZOID MAN

 プログレ話の最後は、忘れてはならないキング・クリムゾン。

 「クリムゾンの宮殿」が発表されてから、もう40年以上経つということが信じられないね。いま聴いていても新鮮だし。このアルバムはいろいろ面白いし。まずはジャケット。クリムゾンを知らなくても、このジャケットは見たことあるという人は多いのでは。鼻の穴おっぴろげて、大きく開けた口、横目の赤ら顔。意味わかんないけどインパクトは絶大。パブリシティの神髄とでもいうべきか。この絵を描いたのはイギリスの画家、バリー・ゴッドバーという人らしいが、24歳で亡くなっているそうだ。絵も残ったね、永遠に。

 話は逸れるが、ヴィンセント・ギャロの超クールな映画「バッファロー'66」を見たことがある人で、うそフィアンセ役の女の子が、ボーリング場でいきなりタップダンスを踊りだすシーンを憶えているだろうか。あの印象的なシーンは、この映画の中でも大好きな場面だが、女の子がけだるそうにタップを踏むあの曲、あれは「クリムゾンの宮殿」に入っている「ムーンチャイルド」。

 いきなりクリムゾンが流れはじめて、おおぅ、と唸ったのはよく憶えている。クールな映画のいい場面で使われて、クリムゾン好きにはたまらないだろうなと。というより、やっぱあの場面はムーンチャイルドしかないな、とも思えてしまうほどピッタリ合っている。機会があったら見てみて。

 まあ、しかし。クリムゾンといえばこのアルバムの頭に入っている「21世紀のスキッォイド・マン」。店主世代は、もちろんこのタイトルではピンとこない。タイトル変更も理解はできるが、納得しづらい、というところ。刷り込まれちゃってるからね。この曲の歌詞もすごい・・・ね。ピンクフロイドの「あなたがここにいてほしい」を書いたときみたいに、この歌詞を自分なりの解釈で意訳しようと思ったけど、やめておく。・・・いずれやってみるけど。

 プログレなのにこんなにハード?って思った曲だった。当時は。でもいま聴いてもそのくぐもった歌声もギターも、これこそクリムゾンなのだなぁと思う。40年越しでいまさらながら、おすすめの1曲。

 今日の国分寺は晴れ。外は暑いくらいだね。お店の中はちょうどいいです。次回のミュージックあれこれはプログレからハードロックへ。ブリティッシュものから。お楽しみに。

 今日流れているのはもちろんクリムゾンです。終日ではないですが。
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by yoshizo1961 | 2014-04-26 15:38 | ミュージックあれこれ | Comments(0)

悲哀のサバ塩定食

 
 かれこれ30年ほど前の話。

 高校を出てすぐ浪人。池袋と目白の真ん中辺りにあった美術予備校に一年通っていた。田舎から出てきて、東京がどこからどこまでなのかイメージ出来なかった頃の話(認識自体おかしいが、池袋が東京の首都だと思っていた)。初めての一人暮らしは、何から何まで、新鮮ではあってもつらいことも。食事もそのひとつ。経済的理由で自炊が基本だったが、料理なんてしたことなし。朝は抜き。昼は予備校の近所の定食。夜は豆腐またはワカメ(しかもふえるワカメ)の味噌汁と、キャベツの千切りとご飯。ずっと、それで。たまに味噌汁に豚小間を入れてトン汁に。と言っても、月一回くらいアパートのそばにあった喫茶店で、焼き肉定食500円を食べて、それが贅沢な晩餐。

 もちろんそれ以外にカレーとか親子丼くらいはたまに作ったが、まあ、そんなもの。そうなると、自分が作るものなどたいして栄養のあるものではないので、昼の定食で栄養を補おうとするが、まあ、ここでも予算の関係で一番安い定食、ということになる。

 同じクラスの数名と連れだって行った、予備校から少し離れたところにあったボロボロの定食屋。いまどき見かけないくらいの(当時はいっぱいあったけど)煮しめたような店内と外観。毎日のように通ってはいたが、昼時にも関わらずいつ行っても客は自分たちくらいで、まあ、ゆっくりとはできた。そこで注文するのは全員同じ。それも毎日同じ、サバの塩焼き定食350円。

 熱々の焼き加減が絶妙で、毎日食べていても飽きなかった。たまに浮気するやつもいたが、サバ塩がサバ味噌に替わるだけ。一日の唯一の蛋白質。なんでサバ塩しか食べなかったんだろう。いま思い出してもわからない。

 ある日いつものように同じメンバーで定食屋へ。いつものように自分たちしかいないテーブルで、店の棚にあった煮しまったエロ本(昔よくあったエロトピアみたいなソフトなエロ雑誌)の束から、めいめいが引っ張り出して何気に読みながらサバ塩が焼きあがるのを待っていると、一人が素っ頓狂な声を上げた。

 そいつが指差す先には、巻頭のヌードグラビア。まあ、いわゆる普通(?)のポーズをきめるモデルさんのヌード。当時定食屋に普通に置いてあるエロ本なんて、さほどのものでもなかったし、そのヌードだってどうってこともないものだった。しかし、(おおげさに言うと)震えながら指し示すそいつの指先をたどると、そのモデルさんの顔、いや、そのヌードはいま予備校の実習でリアルタイム(その当時のね)で描いているヌードモデルのお姉さんではないか!

 事務所かなんかに所属していて、ヌードモデルというカテゴリで仕事をしているわけだからこういう事もあると今なら思うわけだが、田舎から出てきたばかりで18歳になったばかりの自分には、少しばかり衝撃であった。それはみんないっしょで、複雑な思いのまま予備校に戻ると、その日の午後の実習で同じそのモデルさんを描いていても、ストイックに対象にせまっていくこともできず、妙なポーズもチラホラして、今思えば、若かったという事だろう。その日食べたサバ塩定食は、いつもと違った味がした。

 まだあの定食屋はあるのだろうか。・・・ないだろうね、たぶん。悲哀のサバ塩定食よ、永遠なれ。

 今日の国分寺は晴れ。暖かいね。もう寒い日は来ないかな。
 
 今日流れているのはおおたか静流。透き通っております。
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by yoshizo1961 | 2014-04-25 13:34 | 美術あれこれ | Comments(0)

まどそら堂しいかちゃんの空想列車怪奇ミステリー編「怪人蝶」後編

 (昨日から続き)



「んなぉぉぉぉぅっーーーーーーーーー!!」

 ええっー?二十面相がご主人に向けてステッキを投げつけようとしたその瞬間、どこに隠れていたのか、まどそら猫が雄叫びとも悲鳴ともつかぬ泣き声をあげながら二十面相の腕に飛びかかった!腕を引きちぎるくらいに噛みついた痛みに、唐突にあげた悲鳴こそは二十面相のものだった。

 猫ちゃんー!いいぞー!いいところで出てきたわー!って、居たならさっさと出て来いよー!その反動で床に振り落されたわたし。二十面相は痛みに顔を引きつらせてもんどりうつと、まどそら猫を振り払い、今度はほんとに怒りの表情をして立ち上がった。

「うーっ、ゆるせない、お前たちー!わたしを本気で怒らせたなー!」

 って言ったって、わたしが何したって言うのよー!とんだとばっちりだわよー!

 怒りに震えた二十面相はもうめちゃくちゃに暴れだして、お店の中はもうボロボロ、それよりご主人も猫ちゃんも、絶体絶命状態!もちろんわたしも!こんな時はどうしたらいいの、落ち着くのよ、落ち着いて、しいか。何か、何か手だてがあるはずよ。何か、何か忘れてる何か、ん?忘れてる?んん?そう、そうだーーーーーー!忘れてたー!

「ごしゅじーん!呪文よ!呪文をーーーーー!」

 掠れながらも大きな声が出たわ。そうよ、彼、彼が。彼が助けてくれる?

棚の下敷きになったままで二十面相の無暗な攻撃を受けていたご主人は、わたしの言うことを瞬間的に理解して言葉を発しようとしたけれど、その時には意識を失う寸前だった。

「むら・・か・・み・・・」

 えっー?なんていったの?むらかみ?それが呪文なの?

「む、む・・・ら・・か・・み・・・・りゅ・・う・・・」

 ええっー?むらかみりゅう?むらかみりゅうが呪文なの?ほんとに?
ご主人、力つきて意識を失ってしまったみたい。わかったわ、待ってて。わたしが彼を呼び出してみる!

「む・ら・か・み・り・ゅ・う」

 ? 出てこないじゃない、ん?もう一度。

「むらかみりゅう!」

 だめ?呪文じゃないのー?

 さっきからぶつぶつひとり言を言っていやがるのは、おまえかー?って、キャラが悪いやつ風に変わってきた二十面相がこちらに近づいてくる。うー、まずいよー。考えて、考えるのよ、しいか・・・呪文・・・じゅもん、むらかみりゅう、村上龍・・・。うん?そうだわ、少し前にご主人のブログで出てこなかった?村上龍の話、コインロッカー・ベイビーズの話で(2014/1/19ブログ参照)。そうよ、あれは、呪文よ!・・・思い出した!みぎぶたみぎぶ・・・

「考えが変わったよ、もうここで始末してやる、おまえもみんなもすべて・・・」

 二十面相の手が伸びてくる。いやーん。ああ、それより呪文、「みぎぶたみぎ・・・」

 二十面相が引きつった表情のままでわたしの腕を掴み、ひょいと持ち上げるといきなりお尻を蹴り上げた。ああ、もうほんとにだめ、信じられない、どうなってるの、しいか、もう絶体絶命。蹴り上げられた痛みがすごすぎて逆に痛くない。もうおしまい?このまま起き上がれない?意識が飛ぶ、飛びそう、もう限界・・・。

 蝶が、さっきの蝶がまぶたの裏で飛んでいる。蝶?そうだ、蝶だ!最後の、さいごのちからで言ってみよう、これでだめならもうお終い。言ってみて、しいか。

「右豚右豚左豚右豚右豚時計蝶!」

 あははは。風が歌ってる。あはははは。あの人も、わたしも。この太陽の下、また追いかけっこね。至福の時間よ。わたしたちには未来がある、誰にも言わないでね。二人の秘密。でもここはどこ?あなたはだれ?そう、あなたは、あなたはわたしのやさしい人、あはははは。つかまえて、わたしを。あなたのそのたくましい腕で。光を、ひかりを吸い込んで歌うわ、あなたとわたしの歌を。わたしを離さないで、わたしをつかまえていて。

・・・あぁ・・・どこからか声がする、逢いたかった、懐かしい声、あぁ・・・

・・・しいか、しいか。眼を覚まして。・・・僕の声が聞こえるかい?

 突然、眼が覚める。意識を失くしていたんだわ。えっ?でもどうなったの?二十面相は?今の声、今わたしと一緒にいた人は?

 しいか。しいかちゃん。

 え?

ゆっくりと顔を上げる。わたしの前に誰か立ってる。誰かが。え?

「しいか。眼が覚めたかい?もっと早く呼んでくれればよかったのに。なんでこんなになるまで僕を呼ばなかったの?」

 答えられない、ううん、そうじゃないの、うれしくて、あなたにやっと逢えてうれしくて、声にならないの。「まどそら堂で恋を探そう」で出会って以来、何年たったかしら。ずっと、ずっと逢いたかったのよ・・・。

「ひょっとして呪文を知らなかったの?ご主人教えてくれなかった?」

 そう言うと棚の下敷きになったままで動けないご主人のそばに寄った彼が、軽く左手を振ると散らばった本が音もなく棚に収納され、逆回転みたいに壁に吸い寄せられて元に戻ってしまった。魔法が使えるのね、わたしの彼。うそみたい。

「しっかりして、ご主人。ケガしてない?」

そう言いながらご主人を抱き起す彼。・・・すてき。

「・・・だいじょうぶ、ありがとう、王子。久し振りだな」
「うん、それよりご主人、しいかに呪文を教えてなかったのかい?ぼくは彼女が呼ばないと出てこれないんだよ、いまは彼女の部屋住みだからね」
「そうだったな、ごめん、忘れてたよ。ところで、あいつは?二十面相は?」

 あぁ、と言いながら彼が右手をくるりとひねると、その指先にあの極彩色の蝶が。ご主人はすぐさま床に落ちていた虫かごを拾い上げると、無造作に蝶を放り込んだ。それを見ていた彼が、ちょっとおいたが過ぎるね、この人、って言いながら蝶に笑いかけてる。どうやって倒したのか見たかったな、でも見ちゃったらかっこいい彼の勇ましい姿にまた惚れ直しそう!

「そろそろ戻るね。じゃあね、しいか」

 えー、もう行っちゃうの?逢えたばかりだっていうのに。それにわたしだけ意味がわかってないの。まどそら猫をしばらくかまっていた彼が、じゃあ、ってひとこと言ったかと思ったら小さな煙とともに消えてしまった。あーあ、行っちゃった。

「・・・ご主人、ちゃんと説明してください。わたしさっぱりわかりません、どうなっちゃってるんですか?」
「うーん、そうだね、まぁ、今日のところはなんだから、また明日ってことで」

 そう言ってはぐらかそうとするから、そういうわけにはいきませんって強く言いながらにじりよると、ご主人も観念したのか、それともほとほと疲れたのか、じゃあ、そこ座ってと、椅子を拾い起す。向かい合って座ると(ご主人に叩かれて、二十面相に蹴られたお尻が痛い)ご主人、おもむろに語り始めた。

 ・・・・・・というわけなんだよ。信じられないだろうけど、それが真実なんだ。けれどこれは誰にも言ってはいけないよ。しいかちゃんの胸の中にだけ収めてほしい…。
そんなー、無理。黙ってられないよー、それに信じられないよ、そんなお話!みんなだって聞きたいでしょ!勘弁してー!

 結局その日は早仕舞いして、わたしもまどそら猫と一緒にアパートへ帰ってきた。ご主人、買取のお宅に電話して日にちを変えてもらってた。確かにそれどころじゃなかったわね。でも。でも信じられない。ご主人の言った言葉を反芻してみる。・・・やっぱり無理。いったいそんなお話だれが信じるっていうの?そうだ、彼に聞いてみればいいかしら。ちゃんとお話してないし。あっ、だめだった。ご主人こう言ってたわ、彼を呼び出す呪文はそのつど変わるって・・・。それを知っているのはご主人で、結局また聞き逃しちゃった。あーあ。

それから数日後。お店もきれいにかたずけて、いつものまどそら堂に。ご主人もいつも通り。納得できていないのはこのわたしと読者のみなさんよ。そうでしょ、みんな。今日はご主人の口からみなさんにちゃんと説明してって言うつもり。ちゃんとわかるようにね。

「ざーす」

「ざーす」

 うん、いつもといっしょね。ご主人、って声をかけようとして。・・・かけようとして。フリーズ。後頭部、ご主人の後頭部の下、首筋に。

 えっ?


(おわり)


以下、「まどそら堂しいかちゃんの空想列車・SF編」に続く!一挙に謎解き!期待して待て。ポッポー!

 今日の国分寺は晴れ。ほんといい気持だね。明日は木曜日。まどそら堂は定休日です。金曜日にまたお会いしましょう。

 今日流れているのはビートルズ。久し振りに「アビーロード」を。
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by yoshizo1961 | 2014-04-23 13:58 | 創作 | Comments(0)

まどそら堂しいかちゃんの空想列車怪奇ミステリー編「怪人蝶」中編

 (昨日から続き)


 ここはどこ?あなたはだれ?・・・ってどこかで聞いたようなせりふ・・・って言ってる場合?まだ大丈夫、まだ意識があるわ、ほんの少し、でももう飛んじゃいそう・・・どこかに、どこかに掴まらなきゃ・・・落ちてしまう・・・。蝶が、極彩色に輝く蝶が、わたしの視覚を奪ったままどこか知らないところに連れていこうとしている、ああ、でも何故?どういうことなの?ほんとにほんとうに意識が途切れそうになった瞬間、わたしの右手に何かが触れる、それは優しいあの人の手、あの人に連れられて行くのならどんなところでも怖くない・・・。

 うーん、ここは、ここはどこ?さっきといっしょ?同じ場面をループしてる?どうなっちゃてるの、でも気持ちがいい、風が吹いてる、草原を走ってる、あの人と。あの人?わたしが先に行くのよ、あははは。もぅ、あははははは。つかまえて、わたしを、わたしをつかまえて。あははははは。つばの広い帽子を大空に向けて投げるわ。あなたが取ってね、この大空にそのたくましい腕を伸ばして、わたしが投げた帽子を。あははははは。あの森まで追いかけっこよ、追いつけるもんですか、だってわたし、お空も飛べるのよ、あはははは。つかまえて。あはははは。あはははは。

「しいかちゃん!行っちゃだめだ!しいかちゃん!」

 ご主人の声?なに言ってるの?なんでご主人がいるの?今いいところなのに邪魔しないで、今、いま、いま?だって今あの人と、あの人?誰だっけ?

「しいかちゃん!眼を覚ませ!しっかりしろ!」

 何だかご主人が何か言ってるみたい。ん?痛っ、痛いわよ、ちょっとぉ、お尻叩いたわね!うん?痛いわよって、痛ったー!・・・って、ん?え?なに?急に、いきなり意識が戻ってきたわ。どうなってるのよ、いったい!

 ご主人がわたしのお尻を思いっきり叩きながら誰かと向き合ってる。わたしたちの周りに本が散乱して足の踏み場もない状態、さっきまで格闘していたみたいに肩でぜいぜい息しながら左手に網を持ち、右手でまだわたしのお尻を叩いてるご主人、もう、痛いって!もう意識戻ってます!いったいどうなってんの、この人誰?

 その時ご主人と睨み合っていたそいつがわたしに視線を移した。ああ!あのイケメン!あのイケメン男子!・・・こいついったい何者?

「意識を取り戻した?ちぇ、もう少しだったのに」

 ちょっと、ちょっと、なに言ってんのよ、あんた一体何者なの?このしいかちゃんに何しようってのよ?・・・気持ちはそう毒づいてるんだけど、体がしびれて上手く動けない。それにさっきの蝶は、どこにいったの?っていうかさっき見た夢?の中の人って誰だっけ?

「それは俺さ、一緒に追っかけっこしただろ、ははははは」

 えー、なんでわたしが考えてることがわかるの?っていうか、さっきの人はイケメン男子?えー、そんなー。

「しいかちゃん、じっとしてろ、こいつの話も聞いちゃだめだ」

 ご主人はそう言うと整えた息を溜めるようにかがんで、わたしの前に出る。わたしはまだ動けない。

「ふん、小林くん、いや、小林少年、古本屋の店主にばけてどうするつもりなのかな?いつの時代でも君は私の邪魔ばかりしてくれるけど、今度はもう許さないよ」

 イケメン男子がそう言うか言わないかのうちに、ご主人飛びかかって行っちゃった。左手に昆虫採集用の網をまだ握りしめているから、飛びかかってもうまく捕まえられない。っていうか、その網何なの?あー、でもそんなこと言ってる場合じゃないわ!どうにかしなくちゃ、まだからだが動かない!あー、ご主人やられっぱなし!力の差がありすぎよ、あっ、網がイケメンの頭にすぽっとはまったわ、イケメン苦しそう、そこよそこだわ、やっちゃえー!

 頭を押えながらもがきだしたイケメン男子。見る見るうちに表情が変わっていく。苦しむ声が何かを囁いている、えー、なんか黒い煙がイケメン男子の周りに立ち込めだした。イケメン男子のかたちが変わっていく、それなにー?黒マントに黒マスク、バットマンのなりそこないみたいな恰好になっちゃった!いつの間にかご主人の網も引きちぎられて棒しか残っていない。

「ふふふ、小林少年、私に勝てると思っているのかい?時代が変わってもいつまでも子供だね、君は。君がこの怪人二十面相に勝てるわけないだろう!」

 っていうか、二十面相って、ちょっと待ってよ、これってなんかのお芝居?意味わかんないんですけど。ご主人は小林少年なのね、はいはい。って言ってる場合かー!

 棒を投げ捨てると、ご主人思いっきり体ごと二十面相?にぶつかって行った。けれど鋼みたいに固くなったボディを見せびらかすように二十面相が体をひねると、いきおい余ったご主人はビンテージコミックスの棚に激突してバラバラと落ちるマンガといっしょに吹き飛ばされた。ううっと呻きながらも立ち上がろうとするご主人に、追い打ちをかけるように棚が倒れかかってあっという間に下敷きになってしまった。

 ごしゅじーん!叫んだつもりだったが掠れた声しか出ない。どうにかしなきゃ!助けられるのはわたししかいないんだから。しっかりするのよ、しいか。

「ふふふ、観念するんだな、小林くん、こちらのお嬢さんはわたしが預からせていただくよ、いやいや、大丈夫、手荒なことはしないさ、私は紳士だからね」

 そう言うと二十面相は後ろを振り返り、動けないわたしの腕を引き上げるように抱えるとその腕力で軽々とわたしを持ち上げる。いやっ、やめて、触らないで。さっきの夢の人がこの人?うそよ、うそだわ。あの人はわたしの優しい人、こんな人じゃない。

「やめろ!しいかちゃんに触るな。お前の思う通りになんかさせないぞ」
「まだ力が残っていたのか、ではとどめを刺してあげよう」

 そう言うとわたしを抱えた反対の腕でマントをひるがえすと、二十面相の手に先のとがったステッキが。わたしを抱えたままステッキをそらに投げて、握りをかえるようにして掴むと、ご主人に向かって振りかざした。

「では、小林くん、さようなら」

 ちょっとー、危ないー!絶体絶命―!誰かー!

(つづく)

 今日の国分寺は曇り。雨は降ると思うから、もう外置きの本は中に。

 今日流れているのはマイク・オールドフィールドの「チューブラーベルズⅡ」。Ⅱもなかなかいいですよ。
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by yoshizo1961 | 2014-04-22 14:47 | 創作 | Comments(0)

まどそら堂しいかちゃんの空想列車怪奇ミステリー編「怪人蝶」前編

 今日は、しいかちゃんシリーズの続編です。前編・中編・後編と、三日間に渡り長丁場となりますが、どうぞお付き合いください。

 
 このあいだからご主人の様子がおかしい。このあいだっていうのは、わたしが昆虫採集の話を持ち出したときのこと。遠い眼をして天井あたりを見つめてぼーっとしたり、話しかけてもうわの空だったり。変なこと聞いちゃったのかな・・・わたし。
 

 おさらいしとくね。わたしはしいか。まどそら堂のかんばん娘。って勝手に言っちゃってるけど。ときどきお店番してるだけなんだけど、結構信頼されちゃってる?今までの展開は「まどそら堂で恋を探そう」(2013/11/22ブログ)・「まどそら堂しいかちゃんの空想列車」前・後編を読んでね(2014/4/5.6ブログ)。共にカテゴリ・創作を参照。

 ほらほら、そんなところで寝てないの、しっぽ踏まれちゃうよって、ああ、これはお店のかんばん猫ちゃん。昼間はお店でブラブラしていて、夜はわたしのアパートに帰ってくる。自分で帰って来られるから楽チン。店に初めて来た日から、事件は始まっていた・・・あとから思えばなんだけどね。あのイケメン男子、考えてみればあいつがいけないんだわ。そうよ、きっと。あの後ちょっとした事件があったんだよね。やっぱり猫ちゃんを返そうとしてイケメン男子をご主人が探していたとき、なにか別のトラブルに巻き込まれちゃったみたい。詳しいことは教えてくれないけど、それからご主人、遠い眼をするようになったんだもん。

 最近ご主人の様子がおかしいのは、なにがあったかのかはわからないけれど、あの時のことが原因なんだと思う。わたしの第六感がそう言ってる。結構あたるんだから、わたしって。

「今日は夕方からお出かけなんですよね?」
「うん、近所で買取があるからね、しいかちゃんお店頼むね」
「はい・・・ところで、あの、言っていいのかどうかわからないんだけど、あー、あの、でも言いますね、実はこのあいだ、あのイケメン男子、いや、猫ちゃんを連れてきたあの男性のお客様ですけど・・・」
「ん?んん?あいつがどうしたって?」
うーん、やっぱり食いつきがすごいなぁ・・・いったいなにがあったんだろう?
「いや、実は二、三日前に見たんですよ、お店の前で・・・」
「えー?お店の前?来たの?」
「いえいえ、来たんじゃなくて、何て言うかな、そっと覗いてたっていうか・・・」
「んー、なにぃ、あんのやろー、調子こきやがってくっそー、んにゃろう!」
ちょっとちょっと、ご主人そんなキャラだっけ?ん、んにゃろうって?
「それで?それでどうしたの?」
「どうした・・・ってどうもしませんけど、そのまま行っちゃいましたから・・・」
「・・・・・・」

 うーん、やっぱ言わなきゃよかったかな・・・と、その時だった。お店の前にまたあのイケメン男子が!
「あー!あれれれー!」
「ん?どうした、しいかちゃ・・・」

 って言うか言わないかのうちにイケメン男子に気づいたご主人は、もの凄い速さで帳場からとびだしたかと思うと、いままで見たこともない勢いで走り出した。それを見たイケメンも、脱兎のごとく駆け出したから、わたしがドアまで駆け寄って二人を覗いたときには、もう坂の下の方まで走って行ってしまっていた。
 
 す、すごーい、早っ!走れるんだ、って変なところで感心しながら眼を凝らしてよく見ると、ご主人の手に昆虫採集の網が!えー、いつの間に!?持ってたっけ?んなワケないよね?えー?

「ふぅ、くっ、くっそー、と、取り逃した・・・」
まだはぁはぁ言いながら戻ってきたご主人の手には、もう網は握られていなかった・・・。うーん、よくわかんないなぁ・・・どういうこと?

「・・・しいかちゃん、お水一杯ちょうだい」
はいはい、って言いながら差し出したお水を一息で飲み干したご主人は、コップを握りしめたままゆっくりとこちらを向いて、こう言った。

「しいかちゃん、信じられないかもしれないけど、これから僕が言うことを誰にも言わないって約束してくれる・・・かな?」
へっ?なになに?もちろん、誰にも言わないっていうけど、自信ないかも。でも…一応頷いてみせる。
「じつは・・・僕は・・・ぼくは・・・いや、やっぱりやめとこう」

 えー、ちょっと待ってよ、そんなのなしだよー、気になるじゃん!ちょっとー!一度いいかけたことはちゃんと言おうよー!もー!・・・っと、その時だった。お店の明かりがまたたきながら、風に揺れるように消えた。そしてまだ夕刻の、暗闇にはまだ早い時刻、薄ぼんやりとした夕闇に支配されたお店に、どこからともなく、ひとひらの蝶が。

「しいかちゃん、見ちゃだめだ!見てはいけない!」

 ご主人の声は聞こえたわよ。でも、もう、遅かった。見たこともない極彩色の蝶が優雅に舞いながら、極微小のきらきらした鱗粉をまき散らす。わたしの鼻腔に吸い込まれた鱗粉が、わたしの意識を奪おうとしているのがわかる。だめ、だめよ、・・・だめ・・・。

 急に視界が開けて辺りに光が渦巻く。閉じかけた眼が自分の意思ではなく大きく開く。蝶が、極彩色の蝶が。だめ、見ちゃだめ、でも眼が閉じられない。意識が奪われてゆく。蝶が、蝶が。意識が飛ぶ前に、一瞬、網を振りかざすご主人の姿が見えた気がした・・・。

(つづく)


 今日の国分寺は曇り。まだ雨はもっていますが。このまま降らないで・・・。

 今日流れているのは、イエスの「トーク」です。
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by yoshizo1961 | 2014-04-21 14:40 | 創作 | Comments(0)

MUSIC FROM THE BODY

 今日はプログレの迷盤?ロン・ギーシン/ロジャー・ウォーターズの「ミュージック・フロム・ザ・ボディ」の話を。

 アルバムジャケットが印象的、というかキモい。真っ暗闇に立つ女性の人体標本。初めてみたのは高校生の時だったけど、まあ、忘れることもなく記憶されていた。裏面のモノクローム画面のほうがもっと怖いけど。これだけぶっきーだと、記憶も操作されずにそのまま残るものなんだね。

 ロジャー・ウォーターズといえばご存じの通りピンクフロイドの人。ロン・ギーシンはウォーターズの友達で現代音楽家。あの「原子心母」のオーケストレーションをして壮大な楽曲に作り上げた人。原子心母を聴いている人なら、ボディも知っているかな。原子心母好きならボディにも期待してしまったよね、たぶん。けれどもちょっと・・・かな。でもきらいじゃないよ。お店でもたまにかけてるし。

 初めて「ボディ」の存在を知ったのは高校1年の時。同じクラスの隣の席に座っていたIくんに教えてもらったんだと思う。彼の場合は、プログレ好きの兄貴の影響でピンクフロイド好きになって、その流れで「ボディ」も聴いていたんだと思う。その頃にテープを録ってもらったのか記憶が定かではなくて、自分がいつ聴いたのかよく憶えていない。不思議な曲、イントロが変、そんな記憶だけが残っていた。

 月日は流れ、(今はもうなくなってしまったけれど)吉祥寺の外盤屋で、カナダ盤の「ボディ」を見つけて速攻で買った。まだネットどころか携帯もない時代だったから、とにかく現物のCDを見つけたら速攻で買っておかないと手に入りにくかった。当時、CDの「ボディ」の日本盤は無かったと思う(記憶違いだったらごめん)。そして去年だったか、レコード盤も手に入れた。レコードで聴こうがCDで聴こうが同じなんだけど、やっぱなんか違うのですな、これが。

 先日お店で「ボディ」を流していたとき、学生さんのお客様が、江戸川乱歩のポプラ社版の二十面相ものをじっくり読んでおられた。面妖な音楽に支配された店内で、乱歩に集中できていたのか、それとも読むふりをしてじっと「ボディ」を聴きこんでいたのか。・・・聞いてみればよかったな。

 今日の国分寺は曇り。雨はなんとかもってほしい。

 今日流れているのはそうです、「ボディ」です。
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by yoshizo1961 | 2014-04-20 14:20 | ミュージックあれこれ | Comments(0)