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「影裏」読んでみた

 沼田真佑の『影裏』を読んでみた。

 第122回文学界新人賞作品でもあり第157回芥川賞作品でもある。お店にあるのは、文学界の5月号(新人賞発表号)。

 先日、芥川賞の『コンビニ人間』を読んだばかりなので、芥川賞続きで読んでみたのだけれど、コンビニ人間とはまるで違うというか(ま、違うのは当たり前か)、なんか、小説っぽい小説というか。

 とにかく描写が細かい。細密な描写というわけではなく、サラッといえそうなところもきちっと描写するので、読んでいてウザったくなるほど。何度も途中でやめようと思ったけど、きっと何かあるに違いないと読み続ける。

 残念ながら想像とは違い、何もないままずーっと微に入り細に入りの描写が続く。おやっ?と思う記述に至ってもその答えはないし、ただ淡々と話は続くのである。ところが最終の頃に急激に話の波が高まり、とはいえ物語の抑揚というわけではなく、なんだか不思議なんだけど急に読みこめてくるのである。

 大震災の時の話であり、セクシャリティの話でもあるし、人間の不可思議さの話でもあるんだけど、超絶な描写テクのため文章がきれいすぎて昭和の巨匠が書いているみたい。とっつきにくかったんだけど、読み終えると濃ゆい読後感が残り、あんまりタイプじゃない作家なのに、次回作も一応読んでみるかという気になるという、なんか矛盾してるんだけど、不思議な作家さんの作品だった・・・という感想でありました。

 今日の国分寺は晴れ。明日から雨?

 今日流れているのも、キース・ジャレットです。
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by yoshizo1961 | 2017-10-05 14:28 | 本あれこれ | Comments(0)
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