クリスチャン・ボルタンスキーの作品集が入荷しました。
クリスチャン・ボルタンスキーは、フランスの美術家。ユダヤ系フランス人の父を持つ。そのためにボルタンスキーの作品にはホロコーストを意識させるものが多い。ていうか、人物写真と電球の組み合わせから感じられるあの静謐さからは、「死」を意識せざるを得ない。父親がホロコーストに巻き込まれそうになった世代であるから、ボルタンスキー自身、親を見てそんなトラウマを抱えてしまうことは無理もなく、人物写真の作品以外の影絵や心臓の音にしても、「生」の裏返しの「死」が作品の本質だということはすごく伝わってくる。
なぜか魅かれる作家。享楽的な作品じゃないからかな。享楽的というのは言葉通りの享楽的という意味。真摯に何かに向かっている感じが作品にありありと浮かんでいるし、歴史的な部分はさておき、人間本来の生死にかかわる問いに共鳴してしまう。歴史的な部分というのは、ホロコーストを体験もしくはリアルに感じられる経験を持っていないという意味(本や映画等で得た知識の中でのホロコーストは知っていても)。
なんの前知識が無くてボルタンスキーの作品に触れても、作家が見ているであろう世界、または提示しようとしている世界が何となく伝わってくるのは、この作家の美術力が凄いからではないか。日本では地味な印象しかないかもしれないが、特筆されるべき作家だと思う。クリスチャン・ボルタンスキー、おすすめです。
今日の国分寺は晴れ。
今日流れているのは、フランク・ポールです。