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虹や月あかりからおはなしを・・・

 昨日の日曜日は、ブックタウンフェス関連企画のひとつである東経大の講演会に行ってきた。

 東京経済大学図書部が主催する葵祭講演会の二日目、「虹や月あかりからおはなしをもらってきた作家・宮沢賢治」と題した大岡玲さんの講演会。大岡玲さんはいわずと知れた芥川賞作家。三島由紀夫賞も受賞されている。東京経済大学経営学部教授であり、図書館長でもある。うちのお店でも『表層生活』など数冊在庫があったけれど、もう売れてしまっている。新作は「たすけて、おとうさん」。

 まだまだ新しい図書館の二階の一室で開かれた講演会。開演前に図書館の前に作られた野外ステージからアイドルグループ(誰だか知らないけど)の歌声と歓声が。講演中にかぶるのかと思いきや、ちょうど講演が始まった時には終わった模様。白い壁に穏やかな光の静かな部屋で何を言っているのかわからない増幅された歌声と歓声を聴くギャップが面白い。

 さてさて、講演の内容は表題通り、宮沢賢治。宮沢賢治の作品とその生涯、作品を成り立たせる要因など、様々な視点から賢治を探っていく。賢治は幻視者(ヴィジオネール)であり、想像力ではなく講演タイトル通り、虹や月からお話をもらってきた作家であると。また、全能感に満たされた作家であると。

 たしかに賢治は普通の人が見ているものとは位相のちがう世界を視ている人のような感じがあって、そこに鉱物をはじめ科学への興味が相まって、宇宙を感じさせる文言が多い。きっと宇宙そのものの本質を知りたくて、また万物の理論を童話や詩作で構築しようとしていたのかもしれない。

 それぞれの作品の特徴やその作品が持つ意味合いなど、細部に及ぶ考察が的確で深く、聴いていて面白かった。大岡先生は、始まりから終りまでマイクに頼ることなく自声で1時間半しゃべり続けたが、終わった後も息を切らせるでもなく、水をひとくちふたくち飲むと、ケロッとした顔でにこやかにしておられたので、体力はありそうだし、ぐっすり眠るタイプの人なのかなと(笑)。普通、純文の作家だと思えば、どこか神経質そうな表情や陰りが感じられる(古いですかね)が、そんなところはみじんもなく穏やかなふくよかさを感じさせる先生なのであった。

 まったく話は違うが、講演中に頭の中で賢治のことばについて思いを巡らしていて、賢治のことばは科学用語的で宇宙的なことばを好んで使うけど、たとえば「宇宙とか銀河とか」、と頭の中で思ったことばを大岡先生がリアルタイムでそのまま「宇宙とか銀河とか・・・」とおっしゃったのでびっくりしたのであった。
 
 講演の締めくくりとして、賢治は宇宙と交信したものをそのままの形で出し、概念化するのを拒否したという、そういう意味のお話をされたと思うが、提示するだけで伝える力を持ち、物語化されない文学こそ本当の文学のかたちだとも思えるので、お店を副店長に任せて聴きに来てよかったと思った一日であった。こういう企画を度々やってくれたらなーと思う。

 今日の国分寺は雨のち曇り。一日くすんだ空気でしたな・・・

 今日流れているのは、ピンク・フロイド。『アニマルズ』です。
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by yoshizo1961 | 2015-11-02 17:34 | 国分寺あれこれ | Comments(0)
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