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「FRANK」をもう一度

 「FRANK」という映画を観た。観たのは数日前だけど、まだその余韻が消えない。

イギリス・アイルランド合作、監督レニー・アブラハムソン。主演はマイケル・ファスベンダー。この映画をどう説明したらよいか・・・コメディっぽく展開してもどこかシニカルで最後にはやるせない、そしてアート(この場合ロックだけど)っていうのはこういうことなんだよって教えてくれる映画、というか。

おおまかなストーリーはこう。
巨大な張りぼてのマスクを被り、人前では絶対に素顔を見せない、正体不明のカリスマ・ミュージシャン、フランク。彼が率いるアヴァンギャルドでイカれたインディー・バンド「ソロンフォンブス」に加入した、ロックスターに憧れる田舎青年ジョンは、とんでもなくエキセントリックで、でも驚くほどクリエイティヴなフランクの才能に心酔していく。「あのマスクの中にいったいどんな秘密が?」やがてインターネットにアップした動画がセンセーションを巻き起こし、アメリカで開催される音楽祭からオファーを受ける彼ら。だが、バンドを意のままに操り、みんなに認めさせたいジョンと、大勢の前で演奏することを拒むクララたちメンバーの亀裂は深まり遂に情緒不安定になったフランクは暴走して―。
(「フランク」パンフレットより抜粋)

 無表情でしかもコミカルな被り物が、どうにも違和感を感じさせるのは冒頭だけで、いつしかそれに慣れてくると、フランクというミュージシャンの内面すら感じられるようになるから不思議。観る前は、インディーズバンドのインディーなストーリーという印象だったが、ある意味エンターティメントな映画の醍醐味も持った、イカれてるけど愛すべき映画なのであった。当初、主人公だと思っていたジョンは、この映画の狂言回しの役割を担わされたサブ的主人公なのであった。心に染みるのは、フランクの絞り出すような歌声とそのイカれた詩そのもので、すっ飛んだミュージシャンの葛藤がまざまざと描かれる。場末のバーで再会して歌うラストシーンでは、こんなにもやるせない気持ちと、アートの本質を感じさせるようなぬくもり感がたまらない。ステージでぶっ倒れて「お前の曲はクソだ」っていうシーンは、その言葉のフレーズとともにしばらく頭の隅から離れそうもない。

 疲れがたまって凝り固まっていた痛みが、すぅーと楽になった気がした。映画のいいところなんだろうけど、やっぱりアートの芯というか、そんなところを見せてくれる作品に出逢うと、うれしい気持ちになる。もう一度観たいよ。その日は寝るまで幸せでした。おすすめです。

 今日の国分寺は晴れ。午後いちで大導寺シンさんがご来店。葵祭での展覧会、パフォーマンスなどの報告を受けていると、詩人の久保亜図美さんがご来店。彼女が書いた新作の短編小説について話す。新作の「桜の骨組み」はまどそら堂で読めます。

 今日流れているのは、ビートルズ。ホワイトアルバムです。
「FRANK」をもう一度_b0304265_15473597.jpg

 

 
by yoshizo1961 | 2014-11-04 15:47 | ミュージックあれこれ | Comments(0)
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