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危険の報酬とは?

 ロバート・シェクリイの「危険の報酬」を読んでみた。

 「危険な」ではなく「危険の」、なので間違いなく。ロバート・シェクリイは1950年代アメリカSFを代表する作家。この「危険の報酬」も50年代に書かれたもの。

 テレビ番組という、今ならあたりまえにある存在が、当時の想像力で描き出されている。お話は、突飛すぎるやらせフィクション番組風だが、ハチャメチャな設定と、“手に汗を握らせようとする”展開は、短編ならではの小気味いい筋立てになっていて、イッキに読めてしまう。

 現代においての話であったら普通にシニカルな小説として読めるが、50年代当時の作家の頭の中では近未来でのお話という設定だから、やはりそこはSFなのですな。主人公が狂気な心持に陥る結末より、主人公を躍らせる大衆側の普通そうに見える狂気の方が怖い。

合法的殺人がサラリとなされてしまっては困るけれど、現代において一般大衆の目線はこれに近いものを持っているような気もする。そう思えばシニカルというより、みんなして間違ったことをしていても気が付かない無知蒙昧な狂気を小説化した作品、といえようか。

 それにつけてもこの作品の面白さもさることながら、この作品が「SFマガジン」の創刊号の海外翻訳SFの記念碑的1編であるということが、作品に箔をつけている。当時の日本のSF界にも多大な影響を及ぼしたらしく、「・・・小松左京も自伝等で本篇の衝撃を何度も語っているそうだ」(「SFマガジン700海外篇創刊700号記念アンソロジー 山岸真=編」より)。

 古典といわれるSF作品はたくさんあるけど、短編あたりから読みはじめると、いいかもね。挫折する長さでもなく、センス・オブ・ワンダーに溢れているから、面白い。というか、センス・オブ・ワンダー自体がSFなのだけれど。「危険の報酬」を読んで、そう感じました。
 
※読んでみたのは、前出の「SFマガジン700海外篇創刊700号記念アンソロジー 山岸真=編」所収の新訳版です。

 今日の国分寺は晴れ。いい天気でした。

 今日流れているのは、ブライアン・イーノ。静かでいいですな。
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by yoshizo1961 | 2014-09-12 17:33 | SF・ミステリ | Comments(0)
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