「溺れた巨人」バラードvsとり・みき

 何だか普通に不条理な小説、J・G・バラードの「溺れた巨人」。淡々と描写される対象は、海辺に流れ着いた巨人の死体。ウルトラマンサイズの巨人。千葉の海辺あたりに流れ着いたらやっぱり見にいくだろうか。

 夏の夜の読書にはもってこいの小説だ。SFだけど、SF縛りのなかで読まなくてもいける。残暑でへたった脳みその活性化と、エンタメ系の小説に少し食傷気味なら、なお良いかも。ただ淡々とこの世界にはまってみよう。

 カフカの「変身」のような不条理とはまた違う。普通の日常に、ポンと投げ出された巨人。その不条理さに目を向けないところが不条理であるわけだが、それはそれとして話は進む。疑うことのないこの普通さがいいね。そこがこの小説のツボなんだけど。短編だから、寝苦しい夜に、寝床で寝っ転がって読んでもすぐ読めてしまうよ。

 こういった設定の話って、たとえば安部公房の「砂の女」もそうだけど、なんかいいですな。普通から少しだけ位相がずれた世界。ほんのちょっとだけ違うだけなのにね。内容に触れたいけど、これから読む人には情報過多になってしまうから触れずにおこう。

 さてさて、バラードに相対するのは、とり・みきの「SF大将」所収の「溺れた巨人」。もう、漏れる笑いをこらえながら読んでしまった。この小説の淡々とした静謐感を、セリフ無しのコマだけで見事に表現している(笑)。本家バラードの「溺れた巨人」を読んでからでないと通じないけどね。だからこの2冊をバラード版→とり・みき版の順で読めば、このくそ暑い残暑の夜にはもってこいというわけですな。2014年の夏は、バラードを読んだなーという読書記憶がずっと残ることでしょう。おすすめです。

 今日の国分寺は酷暑。まだまだ暑い。陽は短くなってきたけど。一昨日のブログでお知らせした酒と朗読の宵「ほろ酔い夜話」。フェイスブックページの方でもお知らせしています。どしどしご参加ください。といっても秋口の話ですけど。それと、明日は定休日なのでお休みします。では金曜日にお会いしましょう。

 今日流れているのは、キャロル・キング。「つづれおり」です。
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by yoshizo1961 | 2014-08-20 15:01 | SF・ミステリ | Comments(0)
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