哀しみのランナーと無常のブースター

 一昨日の夜は、「虎の穴」であった。

 台風前の雨と風が、容赦なくドアを震わせる。雨風が生み出す冷たい音だけがお店を支配する。今夜は一筋縄では行かぬ予感が、店主の胸に広がりはじめる。この雨と風が何かを伝えようとしているに違いない・・・と一人でハードボイルド風に浸っていたさなか、どーもー!と元気な声で少年が現われた。ちなみに「少年」というのは、とっくに成人しているのに「少年」と呼ばれる新メンバーのことである。

 時計を見れば、まだ閉店時間まで30分もある。虎の穴は閉店後からであるから、気合い入ってるねーと言ったら、準備が大変なんですよー、とお面を装着しはじめる。今夜はお面着用で虎の穴をすることになっていたのではあるが、少年のつけようとしているお面は千と千尋の神隠しに出てきたかおなし風で、相当、手間と気持ちが入ったお面であった。が、まだ営業時間中であったから、お面をつけて店内をフラフラされたらお客様も逃げていく。おいおい、お面のままでフラフラすんなー、と言っても、わはははははーと笑うばかり・・・。まあ、こんな天気じゃ誰も来ないけどねと自虐的に笑っていると、いつの間にか大導寺シンも現れた。

 今日はNさんは来ないのかなぁと言いながら、連絡が回っていなかった手落ちを感じながら準備を始める。大導寺シンが現われるなり、レポートがどうのこうのと一生懸命語りだしたが、メガネに装着する仕様になっている自分のお面装着に気を取られて何を言っているのかわからなかった。いつの間にやら大導寺も紙袋でできた息苦しそうなお面を装着し、何故か白衣まで着てスタンバっていた。

 二人に相対するかたちで座っていたが、その異様さに、うーん、と唸ってからお面をはずして雨と風が吹き付ける外に飛び出して、ドアの窓ガラス越しに中を覗いてみた。こ、これは・・・。もう準備中の看板に差し替えているから、お客様は入って来ないと思うが、バス待ちの人たちが覗いたらこの異様さをどう思うだろうかと想像してしまう。窓の向こうには、どう考えても現実感のないシュールな場が立ちあらわれているではないか。

 こ、これこそが、「虎の穴」にふさわしい場に違いない、と一人で納得して着席。再びお面を装着して、お菓子食べな、コーヒー飲みなと促しても、の、飲めない・・・とお面をしたまま固まっているのであった。一応お茶タイムははずしていいことにして、軽くお腹に入れたあとまた装着。とりあえず写真でも撮っておくかとカメラを向ければ、お面で多少人格が変容したのか、いつもならもじもじするのに、大胆なポーズも平気でする二人なのであった。そんなことをしながらドアの窓から外を見れば、店内を2度見するバス待ちの人と目があったりして、しかもすぐ目をそらされたりしながら、「虎の穴」の夜がはじまるのであった(前ふりが長くなっちゃったので、本編はまた明日)。

 今日の国分寺は晴れ。というか、激暑。「雨降れば人は来ず、暑ければなお来ない」。

 今日流れているのはシュガーキューブス。なんだか懐かしい。
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by yoshizo1961 | 2014-07-11 15:18 | 虎の穴あれこれ | Comments(0)
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