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謎の糸

 今日はさむいですねー。ドアを閉めて、暖房上げても冷たい風が・・・。足元が冷えると体全体が冷えてくるし。早く春になってほしいー。花見に行って、ぼーっとしたいもんだ。今年は花粉も少なめらしいし。みんなで花見に行こー・・・って、まだちょっと気が早いか。

 というところで唐突に本題へ。手塚治虫のおなじみ「ブラックジャック」のエピソードに、手術時に体の中にメスを置き忘れたが、そのまま体の中でメスの周りにカルシウムが沈殿して鞘になり、臓器が傷つかずに済んだという作品(第25話「ときには真珠のように」)がある。また(第47話「針」)では、折れた注射針の破片が血管内を通って体中を駆け回る。

 にわかに信じられないと思うが、これに近い経験をしたことがある。というか、いまだによく解らないのだが。

 それは2年前の冬のことだった。夫婦二人で香港旅行をした時のことだ。香港では中国式の足揉みマッサージのお店がたくさんあるが、今までやったことが無かったし、旅行最終日で疲れも溜まっていたので、一度体験してみるかと夫婦ふたりでホテルのそばの足揉み店に。閉店間際の時間だったにもかかわらず、店員さんたちはフレンドリーで、和やかな雰囲気のなか足を揉んでもらった。

 会話はブロークンな英語と、身振り手振り。たまに広東語と日本語が混じる程度。すると、にこやかに私の右足を揉んでいたお姉さんが、ふと訝しげな表情をして足先を見つめる。そして隣で妻の足を揉んでいる、おなじくマッサージ師のお兄さんに何か尋ねている。私が、ん?と眼で尋ねると、足の先が痛くないか、と。べつに?と答えると、そう?と言いながらも納得のいかない表情。揉み方が痛くないかという意味だと解釈したので、特にそれ以上私も聞かずスルーし、お姉さんも同じくスルーした。

 いい気持ちになってホテルに戻り、さあ寝るかという時間になって、その前にトイレと足を踏み出した瞬間、右足に刺すような激痛が。うおぉぉ!と叫んだが、これが噂の揉み返しか!と軽く考えてすぐ眠ってしまった。触れなければ何も痛くなかったので。

 翌朝、足の踏み出し加減で激痛が走るので、これは揉み返しなどではないなと思いながらも何とか帰国。深夜に家路につき、お風呂の湯船で足先を顔の前まで引っ張り上げ、じぃーっとよく観察してみた。すると親指とひとさし指の中ほどに黒い点が。よぉーく見てみると細い黒い糸か針金のようなものが、刺さっていた。

 これで足揉みのお姉さんの疑問も理解できた。何かが刺さっていたからなんだ、と判ったので明日の朝、明るいひかりの中で”とげ”を抜けばいいとその晩も寝てしまった。翌朝、刺抜きで抜こうとするが、意外と深く刺さっているし、思いのほか抜けないので、大げさではあるけれど、大事をとって近所の外科で抜いてもらうことにした。

 外科の先生は足先を見つめて、たいしたこともないという表情で消毒。消毒液でぬぐうと、はっきりと、とげらしきものが見える。先生はピンセットと針で取ろうとしたが、深い部分に埋没しているので、表面の皮膚を少しづつ削りながら針で突き上げるという作業を何度か繰り返す。が、うまくいかない。ただのとげなのに大ごとになってきた。

 削った皮膚から血が滲み出し、かたわらで見ているだけだった看護士をも巻き込み大掛かりな刺抜きになってしまった。何度も試行錯誤を繰り返し、やっと、とげの先っぽをとらえたピンセットを先生が引き上げる。自分と先生と看護士三人が凝視する、そのピンセットの先のとげは、まるで星新一のショート・ショートに出てきそうな、引っぱっても引っぱっても終りがないホラーのようなとげであった。

 当初5ミリくらいのとげだと思っていたら、3センチくらいの長さの黒いナイロン糸であった。ただのとげだと思っていたからこれほど長いものが足先に入っていたことに仰天し、目が点になった。驚いて開いた口が塞がらない状態だったが、持って帰っていいかと先生に尋ねると、カルテに貼る分だけ切るよと言って、切ったその糸をテープでカルテに貼った。しげしげと糸を見入っていた先生が、突然素っ頓狂な声で「これは僕らが手術で使うナイロン糸に似てるなー!」と言うではないか。

 先生はそのいきさつから、足揉みの際に使った道具などのどこかが刺さったのだと推測したが、そんなわけもなく、だいたい手でしか揉んでいないし、道具など使っていない。足を拭くときタオルを使ったがそれだけだ。ブラシのたぐいを使ったわけでもなく、仮に何かの拍子にそんなものが足にまとわり付いたとしても3センチものフニャフニャしたナイロン糸が刺さるわけもないし、実際に刺さったなら飛び上がるほど痛いはずである。

 なんにせよ、理解できぬままに靴下を履いていると、10年前くらいに手術した背中の良性の粉瘤(できもの)のことを思い出した。たしかあのとき抜糸の際、1本取りきれずに体内に残したままだった。溶ける糸だという医師の言葉を信じていたが、まさか・・・。その旨を先生に言ってみると、にわかに信じられないといった表情で、ありえない、と頭を抱えるのだった。

 もしかして10年以上体内を旅して、香港の足揉みお姉さんの魔力で、足先まで運ばれてきたものなのか。・・・ブラック・ジャックに聞いてみたい。

 今日の国分寺は晴れ。冒頭でも触れた通り、ど寒い!明日は定休日ですのでお休みします。
金曜日にまた。

 今日流れているのはYASUAKI SHIMIZU&SAXOPHONETTESの「CELLO SUITES123」。いい感じです。
 
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by yoshizo1961 | 2014-02-05 16:32 | マンガあれこれ | Comments(0)
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