人気ブログランキング | 話題のタグを見る

穴を掘れば

 唐突だけれど、穴を掘って遊んだことありますか?小さい頃、砂場で穴を掘ってそこに水を入れたりして(すぐにしみて砂に吸い込まれてたけど)。落とし穴も。

 関根伸夫(現代美術家)の作品の中に、やたらとでかい円筒形の穴を掘って、その土を、穴のかたわらに同じかたちの円筒形に積み上げた「位相ー大地」という作品があるが、無の空間になった穴と、その穴の「かたち」というか「存在」を提示しているだけなのに、なんであんなに抵抗感のある穴なんだろうと不思議な気持ちになったことがある。坪良一(現代美術家)の作品でもいつも穴が掘られ、そこにモルタルが流されているだけなのに、なぜこんなに存在感があるのかと思ったことがある。

 「穴」(ルイス・サッカー/幸田敦子訳/講談社文庫)に出てくる穴は、せつない穴だ。掘らされては埋め、また掘らされる。穴を掘るという行為は、象徴的に捉えれば前述の作品のように、いろいろな意味を感じ取れるが、お話しの中では、また意味の違う穴掘りなのだ。

 小学生の時読みたかったなぁと、思う(もちろん大人になって読んでも味わい深いけど)。ともだちのことや、子どもの頃感じる不条理な大人感といった、そんな世界感が胸にしみる。どういったらいいのかよくわからないけれど、読後感は、すぐ誰かに薦めたくなる本だというところか。主人公のスタンリーが感じる世の中の不条理と、穴。友情と、穴。

 登場人物の仲間たちのあだ名がまたいい。「X線」とか「磁石」とか、「脇の下」とか。文字も大きいから子どもはもちろん年配の人にもおすすめ。子どもの時感じていた世界の不思議感を思い出して読んでみると、また面白いかも。ここ掘れワンワンで何かが埋まっていることは無いけれど、こころの奥底に眠っている温かい部分を掘り起こしてくれて、いい気分にしてくれる作品です。お薦めの一冊。

 今日の国分寺は晴れ。いい天気ですねー。寒いけど。

 本日のBGMはYUI。久し振りに聴いたよ・・・。

穴を掘れば_b0304265_1536228.jpg

by yoshizo1961 | 2014-01-10 15:36 | 本あれこれ | Comments(0)
<< つげ義春劇場 センター街で号泣 >>