田渕由美子降臨

 まどそら堂に田渕由美子が、降りてきた。

 これは一大事である。というのも田渕由美子のコミックスがまとまって入荷したので、じっくり読んでいたら中学生の時と同様に、再度ハマッてしまったのである(10月6日ブログ「陸奥A子ふたたび」参照)。

 おやじのくせに気持ち悪いなーと言わないように(笑)。田渕由美子や陸奥A子、太刀掛秀子は70年代後半の日本の文化に影響を与えた作家であり、ちゃんと記録されるべき作品を残した人たちなのであるから、それが、乙女ちっくと言われた少女コミックスであろうともおやじが読んだっていいのである。これは老若男女関係ない。そして、オタク的見地だけでなく、その作品群はもっと論ぜられるべきなのである。

 けれども、たかがマンガじゃないかとおっしゃる方もおられるだろう。そう、ただのマンガなのに、ある世代の人々の胸にこれほどの余韻を残した作品たちが存在していることは事実なのである。

 「乙女ちっく」といわれる少女コミックスが描かれた時代背景や、その特長またその功績などについては別のメディアに譲るとして、個たる作品そのものに言及してみたい。実際の作品そのものに、語るべき何かがある筈だから。

 例えば、「ポーリー・ポエットそばかすななつ」(傑作集2・クロッカス咲いたら所収/昭和52年作品)。舞台はロンドンの、とある大学。学年途中から編入してきた風変わりな女の子ポーリーが、寄宿舎のお隣さんのファーンとのあいだで恋を紡いでいく。が、ポーリーにはある事情があり、突然、離ればなれに。その想いに抗えないファーンは、何もかも振り切ってポーリーを追う。そして・・・。失意のファーンが、ポーリーの忘れ物の傘を開くと、そこに大きく「I LOVE YOU」と書かれていたシーンでグググッとくる。最後のコマは素敵な映画のラストシーンのようである。14歳くらいにはドンピシャの余韻を残すだろう。

 外国を舞台にしている点以外には、ありそうな設定とありそうな展開ではある。あらすじだけ聞けばステレオタイプな恋愛ドラマと言えなくもない。では何故ありきたりな物語のどこにこれほどひびくものがあるのか・・・・・・それは、絵なのである。

 田渕由美子の描く眼、顔、服、街、部屋、そしてそれらの表情がすべてを生み出しているのである。あたりまえだろうって?否、そうではない。尖ったあごの線や、ベタで塗りつぶさず線の集積で描かれた眼球の黒。そのままイラストレーションにもなり得るコマと、その筆力。上手い下手ではなく、気持ちが線にほとばしっているのである。数あるマンガの中で「乙女チック」といわれるコミックスの絵には何かが宿っているのである。田渕由美子にも、陸奥A子にも。
 
 けだるい午後のひと時、コーヒーを淹れてりぼんマスコットコミックスを開く。何もすることがない、でもまだ眠くない夜のひと時でもいい。壁にもたれかかって、そっと開いてごらん。田渕由美子が降りてくるよ。

 今日の国分寺は晴れ。それほど寒くないかな。明日は定休日です。金曜日にまた。

 本日のBGMはホリー・コール。うちのお店にはジャズって似合わない? 
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by yoshizo1961 | 2013-12-11 15:56 | マンガあれこれ | Comments(2)
Commented by もーやん at 2013-12-13 22:14 x
奇遇ですね。同じおじさんの私のところにも先週から田渕由美子さんが降臨しています。
高校の頃読んだコミックスをまた買い集めて、乙女チックが止まりません(笑)。
Commented by yoshizo1961 at 2013-12-14 17:09
もーやんさま

 コメントありがとうございます!たぶん同世代ですかね?おじさんでも乙女チック大丈夫です。この次は、太刀掛秀子について書きたいと思っておりますのでまたよろしくー!
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